ドイツの新右翼
- 作者: フォルカー・ヴァイス,長谷川晴生
- 出版社/メーカー: 新泉社
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
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用語の定義ということでは(ちゃんとまえがきでいわれるように)解説を先に読まれたほうがいいだろう。自分なんか、ドイツ右翼ならわかっとると本文から読んだけど(笑)、やはりこの(日独の比較も)行き届いた解説は先に読むべきだった。たとえば青年保守派と国民革命派のちがい…。「世界の名著」のスペンサーと一緒の巻でコントを読んでるのだが(清水幾太郎編集も興味深い)、青年保守派は実証主義っぽいね。20世紀の言葉だと構造改革派か。
原著書名もそれを踏まえているシュペングラー『西洋の没落』の「西洋」はドイツ語で「夕べの国」といって、その概念史をたどった7章が(解説もいうように)圧巻だった。そういうディテールの積み上げで「実証」的にドイツ新右翼を批判するのだが、たしかに(これも解説の現地での書評を引いて指摘する)劣化した現在版はともかく30~50年代のオリジナルな新右翼思想に著者が意識ではあらがいつつも共感してしまってるように見えるのは対象に共感的な読者のひが目ばかりではなかったようだ(笑)。
しかし続く章で、イスラム主義の女性差別を(欧米右翼の権威主義と同断として)糾弾するくだりは、なかなか耳が痛かった。これについては「イスラム国」の暴虐なんかもあって、シリアでのロシアのプレゼンスなど見るに今ではソ連のアフガニスタン介入は正しかったんじゃないかとすら思うほどに思想転換してきてるもんで…。
絓秀実氏が日本のモーラーは誰かみたいなツイートされてたが、私は竹内好だと思う。文革期に訪中した日中友好協会から西村修平とか出てるのも近いと思うし、村上一郎『北一輝論』に引用されていた親中派による2・26オマージュのミニコミとかね。あと総じて日本の旧右翼は親米に転向してしまっていてその影響が新右翼より強いので、ドイツ右翼の現状(が批判されるなら)より(批判以前に)つまらない。