竹内洋『清水幾太郎の覇権と忘却』
- 作者: 竹内洋
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: 文庫
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それらがブヴァールとペキュシェを経てハンス・カストルプにおいて第一次大戦砲煙弾雨のうちに肉体的にも霧消してしまった上にも、その後のメディア環境の変化に伴う大衆社会化の中にその余燼も消え去っていくかに見える(のが著者のテーマだ)が、それ以上にローカルな経済的覇権の終わりに伴っていることを見なければならない。コントやスペンサーの言説がアシモフや小松左京の科学啓蒙著作に似ているのもその伝で、それらもそれぞれの環境でヴェトナム敗戦までとバブル経済破裂まで有効だった教養なのである。
そういう私個人としては、永井荷風における江戸文化(とその継続としての明治文化)みたいに愛惜して読んでいるのだが(笑)。