horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

今さら網野善彦から石母田正へというのが正しい方向ではないか

石母田正『中世的世界の形成』

中世的世界の形成 (岩波文庫)

中世的世界の形成 (岩波文庫)

 戦後史学のオーソドックスでありながら、戦中の「古代の再建」に抵抗する情熱も熱い名著。網野善彦『増補 無縁・公界・楽』と併読したのだがそうして初めて、最近文庫化されたご当人の『歴史としての戦後史学』を読んだだけではイマイチわからない、網野さんがおよそオーソドックスを180度転倒した議論をしてることがハッキリとわかる。
 正統戦後史学は国民の一般意志の通時性を見るのに対し網野さんは非農業民・東国・女など特殊意志の共時性を対置するのだが、そうしてその根拠もあるのだけれど、やはり歴史として正統なのは石母田正だと思った。
 甥御の中沢新一氏の『僕の叔父さん網野善彦』という、あまりに語り口が鮮やかで逆に警戒させるような本があるのだが、(彼の評判も落とした)オウム事件を経てみれば、特殊意志に依拠する(千坂恭二氏いうところの)サンジカリズムはカルト連立の自公政権大阪維新として体制化し、無縁とは資本主義のことではという指摘も、竹中平蔵とか申す散所太夫新自由主義の代表者となっている今日では自明すぎて空疎に響く。
 でも網野さんの本は面白いんだよな、中沢さんのもだが。やはり読み続けるよ(笑)。