- 作者: ヴィクトル・マリー・ユゴー
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1964/08
- メディア: 単行本
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なんでノルウェーなのかなって読んでるうちにポメラニア戦役*1なんて出てきて、なるほど当時フランスの仮想敵国プロシアの背後を脅かすデンマーク(=ノルウェー両王国)に親近感があったんだなと。100年後のマルロー『侮蔑の時代』なんかだとナチスを牽制するチェコスロヴァキアの軍事力にかけてた期待の虚しさを思い出さないでもない。
だいたい『南総里見八犬伝』と同時代の、同じように伏線を張ってはすべてきれいに回収する考え抜かれた大衆文学で衒学趣味も似ているが、21歳でこれを書いたユゴーってのはさすがに「世界の」文豪である。スコットとともに西洋の時代小説の創始者だが、日本で時代小説が老人に喜ばれてベストセラーになるように今でもヨーロッパにはあるのだろうか。アメリカには西部小説、中国語圏には武侠小説ってのがあるんだけど。
余談だが、司馬遼太郎・山崎正和対談集『日本人の内と外』で山崎氏の紹介した、ある日本人が外国できのこ料理が食べたくてその絵を描いて注文したら傘を持ってきたというエピソードが、この本の月報に三宅艶子という人の書いているところではフランス語の教科書に載っていたデュマがドイツで経験した話としてまったく同じなのは、これいかに。
*S学会の出版部で全集出してるから、学会員だと今頃読んでるのもいないではないのか。