horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

中薗英助『北京飯店旧館にて』

北京飯店旧館にて (講談社文芸文庫)

北京飯店旧館にて (講談社文芸文庫)

 たぶん『ヨーロッパ無宿』というのだったが、昔途中で読むのを止めてしまったこの作家の冒険小説で、ヒーローは非武装なのだが、常に携帯するパイプを武器にする、という設定を覚えている。あれでコツンと頭を叩くわけ。この世代くらいでは「本物の西洋近代」フェティッシュだったのかなパイプは。
 なんか前も堀田善衛の通俗版とかバカにしたように書いて申し訳なかったが、そんな浅いものじゃないです。西洋近代的に月並にいうと「政治と文学」という問題設定に収まってしまうけれども、異文化(とも言い切れないが)を背景にする都市に謙虚に対した姿勢が、ノスタルジーから過去現在日中双方の支配権力に対する抵抗の契機を引き出してくる。そのこと自体が都市のディテールを描写した文芸の香気をたちのぼらせているから、そこには花田清輝のいうごとく「政治と文学に対立なんかない」。