horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

イーディス・ウォートン『エイジ・オブ・イノセンス』

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

 一見よくある映画ノヴェライゼーションのような文庫本を某古書店3冊100円の棚からサルヴェージしたのは海野弘『ニューヨーク黄金時代』を読む以前であって、情報ソースは小谷野敦氏だった。そういうふうに重宝はしていた存在だが。アメリカのプルースト(まだ読んでないが)とされるだけに、読み応えのある小説。1920年代から日本でいえば明治初期を振り返るノスタルジーで、谷崎『刺青』冒頭文に似た意味のイノセンスアメリカから見るとモダンはヨーロッパのことだったのがわかる。知的な女の悪意の目に映るアイドル的美少女、みたいなところもある(笑)。ナチス御用画家の描くような金髪少女の復活にまた一旦は屈服させられる前夜に、過去として克服したつもりの余裕を見せている。鷲田小彌太著でナボコフはアンチ・ドストエフスキーといってて、なるほどと思ったが、あれがファシズム批判だとすると、やはりこれはまだその以前だ(谷崎『痴人の愛』は予感か?)。