これもヨーロッパとの比較論だがもっと原理的、はからずも
アレントに近い問題意識がある。以前に著者の『
「世間」とは何か (講談社現代新書)』を読んでもピンと来なかったが、遺著であるこの本で、自分の意識も上がったせいか訴えられていることがよくわかる。上の桜井著で動物愛護の問題に絡んで、もともと
キリスト教では人間と動物は峻別されるから愛護なんかありえないのが、進化論によって人間と連続性が確認されて動物愛護が初めて出てくる、逆にはじめから人間と動物が連続した日本には進化論がなじみやすいという理解が示されていたが、こちらでもやはり同じようなことが出ていた。素直に受容された進化論による
自然淘汰、弱肉強食というような発想が、冒頭に見たような世間に一体化した者の冷酷さを生んでいる。