horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

平林たい子『愛情旅行』

 5年ぶりに再開したタイトルだが(笑)、これも母の旧蔵書の角川文庫。別に勘案したわけでもなく、帰省(というほど大げさなもんでもないが)中に携帯して読んでいた佐々木譲『愚か者の盟約』ハヤカワ文庫と共通項があって、国会議員と「ダブル不倫」(と書いたがダブルの対象をちがうように理解していた私は)、社会党(あるいは「民衆党」)が勝つ話だ。
 それぞれ50年代と90年代に発表されて40年の開きがあるが、戦後政治の始まりと終わりがそれぞれに活写されて面白かった。特に平林たい子の(経験者?)女性の目で見た不倫の心理描写がナマナマしく、またこういうのを読んでる女子大生の母というものが息子には謎というか…(苦笑)。
 50年代の風俗描写もまた興味深い。たとえば、保守党議員候補の選挙事務所で後援会の「城西パチンコ協議会」から派遣された女事務員が

時々プカリプカリと煙草をふかしながら、一日中講談本をよんでいる。

最初点景人物かと思われた彼女はあとで大きく登場してくるのだがそれはさておいて、ちょっと擦れた感じのオネエチャンにせよ今時こういう受付嬢いないよな(笑)。暇ならスマホは弄るだろうけど、仕事場で喫煙しない(できない)、というか若い女が喫煙すること自体かなり少なくなってるはずだ。とりあえず講談本がスマホになってるとしたが、講談本の系譜はTVの時代劇ドラマにつながり、今だと(よく知らないが)「刀剣乱舞」とかってものになるのかな内容的には。

レコード屋の飾り窓のテレヴィジョン放送は、もう終わっていた。

TVがまだこういう段階の当時である。レコード屋がCDショップになってももう絶滅危惧種で…TVも斜陽産業になって(その意味で)「もう終わっていた」。
 あと、帰宅して調べると平林たい子は信州出身のアナキストだったんだね。ヒロインがその方面に「愛情旅行」して、このへんの女は不細工が多いみたいに思ってまだ見ぬライヴァルに優越感を持ったりするのが、自嘲だったのか(笑)。信州のアナキズム関係だと『農村青年社事件―昭和アナキストの見た幻 (筑摩選書)』が参考になる。