horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

フェアウェル余談

 多少の皮肉を込めてヒューマンと評したが、ヒューマン主義=ヒューマニズムとは普通、人道主義ないし人間主義と訳される。ところが仏語でユマニスムといえば、人文主義に振られるルビだったりもする。そう、この映画フランス産なだけにヒューマニズムであるだけでなくユマニスムなのでもあって、ネタバレを避けておおざっぱにいうと、アルフレッド・ド・ヴィニーの仏詩の引用がスパイの運命の比喩となるような、人文教養の高さがさすがでもある。(厳密にいうと、ロマン派のヴィニーは人文主義の対象にはならないが。)
 ナレーションこそないが小説でいえば話者にあたる不本意にもスパイを仲介させられる無垢な(というのか)フランス会社員がどう見てもユダヤ系だし、CIA官僚のウィレム・デフォーが名前はアイルランド系でもハーディ・クリューガーの代わりにナチス武装親衛隊の戦車隊長役を演っても違和感ない面相ゆえか悪役なのも、冷戦勝利を寿ぐネオコン・フランス支部制作の徴候を示したもので、やや冷淡なレヴューとなっていたところにフォローのつもり。敵の得点を追加で挙げるに、レーガンという人物もまた、50年代リヴァイヴァルである点も的確に描いていた。