horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

フェアウェル さらば, 哀しみのスパイ

http://www.farewell-movie.jp/を観てきた。通常料金は無論サービスデーの千円でも劇場で観るのは久々で、今年初めてではないか(もう11月)。このシネリーブル神戸で以前観たのは「ヒトラー、最後の12日間」。もっと以前には、母に連れられて来たこの「朝日会館」でディズニーの「まんが映画」(アニメとはまだ言ってなかった)を観、ブロックひとつ越して西の大丸百貨店最上階のレストランで、お子様ランチを食したものである。母は朝まずS台の生協に寄り割引券らしいものを求めるのだった。この母にしてこの千円均一息子あり。
 さて今回の映画は・・・ヒューマンだねえ。話としてのみならず、歴史観としてヒューマンなのだ。ペレストロイカソ連の崩壊は、一人の男の勇気ある決断(息子への愛情に駆られた)によるものだというような。 構造主義以前、50年代のサルトル実存主義に逆戻りなんである。逆戻りなのは80年代ノスタルジーでもあって、レーガンミッテランゴルバチョフを再現してるのも可笑しい。フランス流の国際政治版「三丁目の夕日」か。舞台モスクワ風景もブレジネフ時代のスターリン回帰を象徴的に撮っているが、あくまで「人間中心」なのが特徴だ。
 30年跳びの再現は、これまた海野弘セオリー通りである。最近に古書で求めて今読んでいる氏の著作がちょうど映画の設定時期に書かれたもので、西武百貨店ロシア・アヴァンギャルド展がソ連当局に迎合したことを糾弾してポレミックに闘っておられたりするのだ。こんな戦闘的な氏をはじめて知ったが、意外ではない。まさにこの映画のように亡命したレフチェンコKGBを裏切り日本におけるスパイ網を吐いて問題になった頃であり、当時西武の堤清二社長も協力者ではないがターゲットとして暗号名で呼ばれたのだという。これらの著作から海野氏はこの頃既に、世紀末と20年代と50年代が回帰するのを直感して、30年周期説に気づかれたとお見受けされるが、その30年後には、これほど鮮やかに立証されているわけである。
 パテなんて映画のブランドがまだあるのも、この映画のオープニング前のロゴ表示で今さら知ったが、映画館じたいも日活という、まだあったの(失礼)的な。俺自体が、まだ生きてるの?か(苦笑)。そんな俺は、大丸のレストランではなく吉野家で、お子様ランチならぬカルビクッパ丼(今なら玉子無料サービス)をビールで流し込み、こんなの毎日食ってりゃそりゃファビョンドン・デリーロの小説にも出てくる単語)にもなる罠との感慨を抱きつつ家路についた。