horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

田中克彦『言語学者が語る漢字文明論』

 中公新版『世界の歴史』全30巻読了とか、恒川光太郎『秋の牢獄』で浅羽通明批判とか書きたいことは多々あるのだが、とりあえずこれを片しておかないことには…。
 著者の『「スターリン言語学」精読』は読んでいて、拙者少年時代の愛読書イリーン(&)セガール『人間の歴史』にはスターリン公式以前のソヴィエト言語学の痕跡が遺されているのだとか、今回のこの本にもこういう豆知識満載でそれだけでも面白いし、ためになる本なのだが…しかしこの漢字文明批判は承服できない。なんせ漢字こそが東洋の文明と断じて憚らない奴ですからね(笑)。
 周辺騎馬民族目線での漢字(中華文明)嫌悪という意味で、片山杜秀氏によって析出された司馬遼太郎の思想に近い面もある。アジア主義傍流のトゥラン主義(本書で紹介されている。中島岳志アジア主義』にも記述あり)やユーラシア主義というかたちで、(ソ連崩壊後の)著者の(異端的)スターリン主義の命脈が保たれているという感じも受けるのだが、動機の詮索は別としてその主張は説得的で、そのパンチにちょっとぐらついた(笑)。
 だが、そのある意味正しいスターリン民族学(政策)的割拠より、「漢字文明圏」の統合に未来を見たい。あるいは過去を見ることによって。たとえば書けない漢字を機械に変換してもらって情けないと著者はいうのだが、これは漢字の弱点が克服されたこと以外の何ものでもなかろう。