horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

末永昭二『貸本小説』

貸本小説

貸本小説

 筆者(著者も)の生まれる以前に栄えた業種で、それ専用の出版業のあった(今では)知られざる事実と、その作家・作品を列伝式に発掘した好著。本としての体裁・装丁・紙質まで「貸本」に似せるまでにこだわっているので、刊行後16年を経た図書館蔵書は、あとがきに書かれた著者の思惑どおり貸本ふうに(?)本の天や小口の紙に変色を来たしているのも趣深い。
 個人的には、再放送で視た昭和40年代50年代のTVドラマが好きなので、その先駆形態という関心の持ち方。庶民娯楽としての貸本は、TVでそういうものが始まって廃れたものという視点は、この本にはないけれど確実にあると思われる。逆に(平成になって)TVで時代劇が廃れると、文庫本の時代小説が勃興したという事実もある。佐伯泰英「密命」シリーズなんて、シリーズ名じたいがTV時代劇を経由しないとありえないはずだ。江戸時代に「密命」なんて言葉があったのかと(笑)。