horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

ひさびさ読書感想文

内田康夫『平家伝説殺人事件』

 浅見光彦シリーズ2作目という最初期のものとも知らずタイトルで買ったものだが(3冊200円)その文庫本はこの装丁じゃなく宇野亜喜良の絵。
 笠井潔『哲学者の密室』をEQMM初出で読んだ時に付いてたイラストもそうだったからというのでもないが笠井探偵小説理論に忠実(といってこっちのほうが先だが)な大量死(ここでは伊勢湾台風)の慰霊を本格トリック殺人でやるという趣向。
 期待した平家伝説のほうが、(宇野の絵がそれを描いてる)野生的でもあれば神秘的でもある美少女というよくある「ロマンチックな同和」(これもいったら差別なんだが)でしかないのが、それはそれであたらずと言えども遠からずな話(武田静澄『落人伝説の旅』参照)ではあるんだが、やや食い足りない。
 そもそも武士の源氏や平家というもの、東夷が自称したにすぎぬのだから(と都では思っていたはずだ)、それを同じような者がどこで自称しようが同じようなことではある(というのが律令制度の良民の立場だろう)。柄谷行人柳田國男論でも武士の起源を論じていた山人の集落が武田著には出てくる。
 まさに探偵と犯人がドッペルゲンガーでもあるように、日本社会でお侍さまと被差別は紙一重なわけである。