horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

呉智英

【断 呉智英】メディアを真に受ける悲劇
2008.7.18 02:55
このニュースのトピックス:コラム・断

 秋葉原連続殺傷事件から一月余。八日付朝日新聞社会学者、宮台真司が事件を振り返ってアッパレなコメントを寄せていた。宮台は言う。《メディアは単純な思考や情報を発信する。勝ち組と負け組の二分法もそうだ。「そんな誤ったメッセージを真に受けてしまうのは、なぜか」「一人でメディアに接触するときは情報に『直撃』されやすい」。身近に、お前はそんな話を真に受けているのかと言ってくれる人がいれば誤解は減る》

 全く同感だ。

 東京の渋谷や原宿で「援助交際」が話題になり始めた時、それを面白おかしく煽(あお)るかのように取り上げるメディアに毎回登場する社会学者がいた。その社会学者はきっと援交ギャルの一人と結婚でもするのだろうと思っていたのだが、彼が結婚したのは名門女子大卒の若く美しいお嬢様。しかも今時珍しい“箱入り娘”だった−とは、三浦展(あつし)の書くところだ。その社会学者は、名門の私立中高一貫校から東大に進学し、都内にある名門公立大学助教授(後に教授)になっている。いやはや、メディアの誤ったメッセージに直撃された人たちはえらい災難だった。

 その社会学者の名前は、宮ナントカと言ったが、失念した。

 今回、宮台は「いい学校からいい会社へという古びた認識」と言っているが、昔から良識派のマスコミが垂れ流すこの古びたメッセージがどれほど欺瞞(ぎまん)的か。朝日新聞は全社員の学歴と偏差値と年収を公開してみたらどうだろう。むろん、フジテレビにも講談社にも、そして産経新聞にもやってもらいたい。(評論家)
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080718/acd0807180257001-n1.htm

 「その社会学者はきっと援交ギャルの一人と結婚でもするのだろうと思っていたのだが、彼が結婚したのは名門女子大卒の若く美しいお嬢様。しかも今時珍しい“箱入り娘”だった」がしかし、宮台の「発見」として、一見お嬢様で“箱入り娘”と見えるような子もまた援交しているということもあったはずである。外見だけでは彼女が「援交ギャルの一人」でないと断定できないし、むしろ援交やりまくっても何ら精神も肉体も病まず、世間には「名門女子大卒の若く美しいお嬢様で“箱入り娘”」として通用しながら大学教授夫人に収まったとすれば、それこそ宮台理論の輝かしい申し子ではないか。
 夫より20歳も若い宮台夫人にはなお輝かしい前途が開けている。宮台の主張に従うと、妻の婚外交渉は当人の自己決定であって夫が制限することはできない。仮に宮台が不服として離婚しようとしても、彼が著書において自ら許可した行為を「不貞」として慰謝料を請求することはおろか妻の請求を減額することもできない。これは宮台夫人に言い寄る男にとっては、その抵抗をラクラクと突破できる実践的に使える理屈であろう。
 宮台の痛いところを突くつもりなら、これくらいはいえないとダメだな。呉智英は『血だるま剣法・おのれらに告ぐ』の出版で見られる関係者への行き届いた配慮振りでわかるが、それ自体としては悪いことではない能吏型の人間である、が評論家としてはどうか。勝ち組と負け組の二分法、そんな単純なメッセージを真に受けている程度では。歴史上の人物では東条英機に似た類型であって、呉と津村喬の関係は、東条と石原莞爾の関係に比定できようか。