- 作者: ギュンターリアー,オリヴィエファイ,G¨unter Liehr,Olivier Fa¨y,古川まり
- 出版社/メーカー: 東洋書林
- 発売日: 2009/09
- メディア: 単行本
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陥没・落盤などの事故の一方で、その地下空間は犯罪や革命の根拠地ともなり、文字通りの「地下活動」の舞台だった。ここで思い出されるのが、故小松左京の代表作『日本沈没』にある、日本では災害が革命の代わりになっているという指摘だ。革命都市パリの四通八達する地下空間に当たるのが災害列島日本の都市直下型地震源たる活断層である。先の東日本大震災はたしか(アメリカのTVの解説で見た限り)プレートテクトニクスというもっと大きな規模のもの(フィクションだが『日本沈没』もこれ)だが、阪神淡路大震災が活断層に起因した(『小松左京の大震災'95』という著作に詳しい)。いずれにせよ起因は人為でなく、大地の無意識とでもいったものだ。
しかし日本でも、災害が起こった後にそのまま放置できない社会の欠陥が明らかになって、意識的な変革が起こるともいえるだろう。安政大地震や、大東亜戦争敗北前後の頻発地震を挙げるのはコジツケのそしりを免れないか。それでもやはり、かかる維新や敗戦の最中に大地が激しく振動したのは偶然と思えない。このたびの地震も、もう原発のような危険で不義なシステムを許さないという、その意味の「天譴」であって石原慎太郎なぞのいう似非道徳の題目ではない。こんな罰当たり爺は、またいい気にアウトドアの視察なんかしている時にでも、一天にわかに掻き曇り、たちまち起こる稲光、でその雷電が当人を直撃するとか、そんなわかりやすい天罰が下ってしかるべきだ(このシチュエーションは天罰よりむしろ怨霊か。3.11犠牲者の方々のみならず新井将敬はじめいくらでも怨念の向きはおられるだろう)。
まあこのような3.11後の問題意識に限らなくとも、近現代パリ秘史として無類に面白い本だ。この翻訳紹介に感謝するが、「人民前線」とか「軍警察」という訳語はいただけない。普通に「人民戦線」、「憲兵」だろう。関係ないが、久我なつみ『フェノロサと魔女の町』という本で「マサチューセッツ警備隊」と訳してる Massachusetts National Guard も「マサチューセッツ州兵」だな。National Guard は、たとえば食玩エフトイズ・センチュリー・コレクションのF-106Aデルタダートにカリフォルニア州兵空軍(California Air National Guard)の塗装がある(これをまさに持ってるわけだが)ように、こんなジェット戦闘機を装備するような「軍隊」であって、たんなる「警備隊」ではない。こういうのに疎いのは女性だからか? 男性差別論者の荷宮和子なら、お前のような卑しいミリオタなんぞ輩出しない女性の平和な本性のしからしむる美質とでも言うんだろうが。