horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

今さら出遅れレヴュー

映画『ボヘミアン・ラプソディ

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 (ほぼ)そっくりさんたちの演じるフレディ・マーキュリー一代の芸道ないしゲイ道映画。ご本人が若いとき(だいたいロン毛のとき)は違和感が少ないが短髪になるとちょっと線が細く本物のあの暑苦しさに乏しいのは、役者が晩年の彼の年齢に達してないからもあるだろうが、かえってエイズ罹患の痛々しさを見せることができていると好意的に解釈しとく。むしろオリジナルフレディとアンジュルムかみこの間にできた息子みたいな感じもしたが(笑)。
 ところがどっこいじゃないが結婚してても子供はできないフレディは、バンド(いうまでもなくクイーンだ)がブレイクして裕福になるとさっさと嫁(「ラブ・オブ・マイ・ライフ」を捧げたのに)と別居してゲイ・ライフを楽しみながら、隣家に住まわす嫁と電話だけで心通じ合わせたつもりで自己満足してるのだが彼女は冷めてて、後に彼が「俺、バイセクシャルかも…」とカミングアウトすると、あっさり「あなたはゲイよ」と断言する。そしてこれ見よがしにボーイフレンドを彼に紹介し、そいつの子供を妊娠してしまうのだ。
 短髪になったときに、バンドメンバーが「ヴィレッジ・ピープルみたいだ」っていうのも道理で、それまで嫁とうまくいってたのにゲイの徴候を最初に(映画では)見せるのがアメリカ・ツアー中にドライブインみたいなところでトラック運転手みたいなのにポッ(ドキドキ)となったらしくそいつがトイレに入っていくのをジト~と見送るシーンがあるんだが、ああいう口ヒゲ生やしたマッチョが好みで、ゲイによくあるように自分の好みの男に自分もなろうとしたのが後期の短髪スタイルというわけである。

Village People YMCA OFFICIAL Music Video 1978

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 参考映像。この中の白人がフレディ好みなんだな。ゲイ嗜好を当初抑圧して女と結婚もしたのと同じく、自分自身のインド・イラン系アイデンティティもコンプレックスだったらしく、最初のほうの描写でパキ(スタン野郎)と差別を受けている。マーキュリーなんていう浅田彰山口昌男的なネーミングセンスの姓を名乗ったのもそのためで父親となさぬ仲にもなっていくが、このゲイとファミリー(バンドも含む)の葛藤が最後に解決されるのがクライマックスの圧巻再現ライヴ・エイド出演シーンなのであって、映画の導入部が居宅に目覚めてその会場ウェンブリースタジアムに向かうシークエンスになってるのがなんとなくポール・シュレイダー『ミシマ』を髣髴させる。
 こういう世界的なロック・スターってのがもう過去のものとなってしまい、過去の人間だから(苦笑)懐かしいんだけど、逆にそれで解放された心理もないではなく、安んじてアイドルに嵌っていられるのもそうだ。