horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

揚げ足取りその1

川本三郎『「それでもなお」の文学』

「それでもなお」の文学

「それでもなお」の文学

 を読んでいると「鎌倉は古都ゆえにほとんど空襲に遭わなかった。」などとあったが、もちろん鎌倉は「古都」なんかではない。かつて都だったことなんかないからだ。同じく川本三郎荷風と東京』に「多年の蓄財を資本にして東京大阪神戸の三都にカツフヱーを開き、」と『つゆのあとさき』から引いた文があるが、さすがに荷風は間違っていない。
 単なる武士政権の所在地だった鎌倉なぞと違い神戸は真に古都であるだけでなく、にもかかわらず空襲に遭っている。従って冒頭の引用はまったく事実として成り立たないといえる。小松左京の『やぶれかぶれ青春記』では海浜川崎重工に勤労動員時に空襲に遭って六甲山系鷹取山まで、『果てしなき流れの果に』では三宮からやはり六甲山麓の諏訪山公園*1まで走って逃げる話があるが*2福原京の古都であるばかりか戦艦榛名とか建造した造船所があって必然的に空襲に遭うのが神戸なのである。福原は正しくは(神戸でなく)兵庫であって、神戸というのはその東側に開港によって出来た外国人居留地に始まる。つまり横浜と鎌倉が合体したような(しかも鎌倉より由緒正しい)のが神戸なのである。

*1:ここから市バス7系統路線でちょっと西進すると安徳帝御所や清盛邸。

*2:こういう自身の戦争体験がベースになってるのが草創期日本SFの値打ちなのだ。