- 作者: 平岡正明
- 出版社/メーカー: 愛育社
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
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落語の中にある歴史認識の凄さ(満州体験)を語って、丸山眞男はじめ戦後民主主義の思想家たちは誰も論じてない、ダメだという。しかし、そうしゃべっている場といえば、法政大学エクステンション・カレッジの公開講座であって、こういう法政のリベラリズムといえば、まさしく丸山の弟子である藤田省三なんかのいた伝統ではないか。著書『大落語〈上〉下』二巻を刊行した法政大学出版局は、ずっと昔にやはり法政の先生、福田定良の『落語としての哲学 (教養選書)』を出している。彼は南方に徴用された体験も書いてたはずだ。内田百間も先生だった、こういう伝統、この本『戦後精神の光芒―丸山眞男と藤田省三を読むために』で読んだ。
ニューオーリンズのハリケーン被災という時事ネタにからめてジャズの発祥地と同じく江戸文化が大川沿いの洪水地帯に発祥したと語る。流れでラフカディオ・ハーンのクレオール小説を紹介して、今からまた注目される作家だというが・・・この小泉八雲は、意志を縮減して愚かさから免れているとして日本人と日本文化を称揚した、およそ平岡思想と正反対に対立した意見の持ち主だったのだ。故人とは別個に八雲に注目して平井呈一の訳した作品集を渉猟してきたので、その目で故人が黒人文化と江戸文化を同列に語るのを見るに、これはやはりインターナショナリズムになりきれてないコスモポリタニズムなんではないかという疑いを持つ。かかる本質的な観点で「シラカバ派」になったと見られるのが、挫折の結果ではないかと。