- 作者: 平林たい子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 文庫
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そうした彼女が一流の女賊を書いた作品集がすぐれたものでないはずがない。というより、これこそが本領発揮であろう。他に大衆文学的にヤクザ小説もあるんだが、これは自分が男だったらこうかというようなもので、(本来そうではないのにわざと最下層にやつした)プロレタリア文学や私小説より登場人物が客観的で、美学的にも花柳界や任侠界のほうにやつしたりしてるほうが貧乏臭くなくてよい。
彼女自身の体験が、三様の毒婦像に流し込まれリアリティを持たせて読みごたえがある。ただ原題の「炎の女」なら、本当に情交中に発火して男を焼尽するようなことを書いたり、逃避行中に情人が野中で狼に食われるのを木の上で見てるより、情人とともに自ら狼となって野を駆け回る方がおもしろい。そういうC・L・ムーアの方がいいなと思うのである。