horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史

帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史

帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史

 で、年末に『中国化する日本』を読んであわてて、出版から一年以内にギリギリ滑り込むタイミングでこちらも読了した。小津映画ってものはだいたいスノッブのブランドで、それだけではかえって興味がないのに、著者への関心いっぽうで読んだが、やはり面白い。
 本の内容の説明とか端折り、面白いと個人的に思う核心だけ挙げると、この著者の日本と中国を等距離に眺められるスタンスである。これは著者の姓から容易に推測できるように、ルーツが琉球の人であるのが大きいであろう。それはどこか、チェコスロヴァキア初代大統領マサリクが『ロシアとヨーロッパ』をものした立脚点に近いものが感じられるのである。
 ここで改めて批判しておきたいのは、同じく内藤湖南のテーゼから出発しながら、ただ「日本に古代はあったのか」などと一国内的に矮小な次元に落としこむ、井上章一国際日本文化研究センター教授である。結局のところ彼は、武士による関東の革命政権樹立と先行する全共闘世代に対して、それぞれ反動的京都人にして日和見保身世代としてルサンチマンにもとづく陰険なせせら笑いを浴びせかけたいだけなんであろうが。