- 作者: ベルナールウェルベル,Bernard Werber,永田千奈
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/09/01
- メディア: 文庫
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生物学的に拡大されたオリエンタリズムというか、蟻の生態に思い入れてエコロジカルでアナキスティックな革命思想を説き、蟻の見聞として人間社会のありようを相対化する。(読んでないけど)18世紀の啓蒙思想家が中国の政体を理想化したり、ペルシア人に仮託して文明批評を書いたようなのの20世紀版かもしれない。そういえば、まさに「百科全書」的な書物が狂言回しのようにも登場している。
まずエンタテインメントとして擬人化された蟻の冒険が面白い。今は南京虫という表記はできないようだが、昔の日本人もよく寄生されていたこの昆虫のグロテスクな性生活(蟻にも襲い掛かってくる)を蟻目線で描いてる場面が悪夢的に印象的だ。
またこの小説シリーズに同時進行で書かれた90年代の急激なメディアの変遷が、つい昨日のことで懐かしくも興味深い。フランスだと携帯やインターネットの普及の前に、何百チャンネルもあるような衛星TV放送があった(今でもあるんだろう)ようで、これを人間とコミュニケーションを持った蟻が体験することで蟻も「革命」されるわけである。ネットの登場もその最初期とシンクロしているので、その当時に託されていた「夢」が今日から見るとほろ苦い。