horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)

蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)

蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)

 シリーズ三冊読むのにエライかかってしまった。特に最終巻のこれは800ページもあって、ずっと鞄に入れてたから重い重い。大江健三郎は?と言われると、その間は読めなかったわけだが…とりあえず二巻までの(監?)訳者は東大仏文で渡辺一夫に師事した大江と同門なハズである。
 生物学的に拡大されたオリエンタリズムというか、蟻の生態に思い入れてエコロジカルでアナキスティックな革命思想を説き、蟻の見聞として人間社会のありようを相対化する。(読んでないけど)18世紀の啓蒙思想家が中国の政体を理想化したり、ペルシア人に仮託して文明批評を書いたようなのの20世紀版かもしれない。そういえば、まさに「百科全書」的な書物が狂言回しのようにも登場している。
 まずエンタテインメントとして擬人化された蟻の冒険が面白い。今は南京虫という表記はできないようだが、昔の日本人もよく寄生されていたこの昆虫のグロテスクな性生活(蟻にも襲い掛かってくる)を蟻目線で描いてる場面が悪夢的に印象的だ。
 またこの小説シリーズに同時進行で書かれた90年代の急激なメディアの変遷が、つい昨日のことで懐かしくも興味深い。フランスだと携帯やインターネットの普及の前に、何百チャンネルもあるような衛星TV放送があった(今でもあるんだろう)ようで、これを人間とコミュニケーションを持った蟻が体験することで蟻も「革命」されるわけである。ネットの登場もその最初期とシンクロしているので、その当時に託されていた「夢」が今日から見るとほろ苦い。