horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

小松左京『果しなき流れの果に』

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

 前掲『見果てぬ日本』小松左京論ではなぜかまったく触れられなかった、その筋では(例:本文庫解説者、大原まり子)「世界的にも稀有なSFの大傑作」というからには(ほぼ)作者のピークかもしれないのに…(全作読んでるわけではないので判断保留)。
 その解説者のいう『ファウスト』的な探究を経てのグレートヘン的なヒロインとの半世紀を隔てる邂逅が、ハイデガーアレントにWって感じられるわけだが…。アレントを読み解く小森謙一郎氏によるとゲーテが同化ユダヤ人の契機となる機微も含めて。
 片山杜秀氏の指摘する小松のゾロアスター教原子力の「火」による疫病やブラックホールの征圧)は、本作ではマニ教ないしグノーシス主義となっているか。悪しきデミウルゴスに反逆する天使的なものだが、月刊「ムー」(は70年代創刊だから本作の書かれた60年代頃のソースは黒沼健か)の主要コンテンツのひとつである「オーパーツ」の謎から導入されるストーリーでは、二元的な対立のなかなかどちらが善悪ともつかないもどかしさがサスペンスフルでもある。
 一元的な文明史観が19世紀的で今では古臭く(端的に近代主義で)もあるが、この彼の(いわば)「サンダーバード」(60年代英特撮番組)的メガロマニアな科学技術とその破滅的災害を覚悟しながら決断するヒロイズムにイカレた一時代が今日の現実の(実際ホロコーストどころではないかもしれない)破滅を(いまだに認めない者もそのうち認めざるをえなくなるであろう)まねいたのではないか。