horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

追悼後記

橋本治義経伝説』

義経伝説

義経伝説

 デビュー作『桃尻娘』以前に執筆した戯曲が大家として定着した時点(執筆時から15年)で日の目を見たものだが、それからだいたい15年後の「双調平家」完結とあわせて約30年後まで、執筆当時(若干28歳)にして既に達していた認識はほとんど変わっていない。
 これまでに指摘してきたとおり頼朝の鎌倉開府こそが中世を開いた革命であることと、にも関わらず革命が不徹底で古代遺制を中世近世を通じ現代にまで残しているという観点が、橋本平家の当たり前なのに内藤湖南以来の京大史学の邪説のはびこる現代においてはフレッシュで革命的な歴史観なのであるが、すでに30年前に確立されたものであることに驚いた。
 後白河院のキャンプな人物像や源平合戦の登場人物を当時のロッキード事件に当てはめてヴィヴィッドである共時性の認識、歌舞伎に親しんで平家物語を語り物として本来的に読める現代人としては特異な才能が一朝一夕なものでないのを改めて驚嘆して、亡くなられた後の祭に知らされたことだった。
 吉本隆明『追悼私記』で小林秀雄(を弔しながら)の『本居宣長』における「源氏物語」理解を批判してるのを読んで、橋本『小林秀雄の恵み』を源語関連でちゃんと読めてなかったのを痛感し、「窯変源氏物語」シリーズの読破を本年の目標とすることにした。