horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

半村良『平家伝説』

平家伝説 (ハルキ文庫)

平家伝説 (ハルキ文庫)

 SFも(特に小松左京)読みたいのだが「平家」のほうに引かれて、これをようやく…。根が非科学的なので伝奇のほうが読みやすいってのもあるが(苦笑)。
 世間や人情のわけを知った著書の独擅場というように下町の銭湯で番台の親爺が裸になって(いわば商品の)浴場に入ってくるという(しかしそういうこともあるのは経験的にすでに知ってた読者)シーンから、風呂屋は北陸出身が多いという本当かどうかわからない話を伏線としてラストのSFチックなカタストロフに至るまで一気に読ませる物語作家の絶品だ。
 しかし建礼門院安徳帝を抱いて壇ノ浦で入水したとかいう凡ミス以外に、タイトルがそもそも間違っていて平時忠(の伝説なのだが)は平家ではない、平氏なのだ。先に紹介した『平清盛 福原の夢』では三位以上の上級貴族になった時点で以後、この家系を平氏ではなく平家と呼ぶとしていたが、これも藤原氏に対して摂関家というような意味合いを含むが本質的ではない。
 今読んでる橋本治『双調平家物語』栄華の巻1がまさにそのテーマを語っているのだが、それはその時にあらためて紹介するとして、平六代という人物が平正盛から六代目だという意味をわざわざ示唆する橋本氏(正しくは橋本先生)の、氏と家の別を蘇我氏(正しくは蘇我家)から説く凄さに驚いたとフライングで記す。