horror of mean army ?

淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬスマのセンチネル

ロングラン上映中! 劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイト

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 今頃はじめて観たという…市内某所、スクリーンでちゃんとね。ほとんど白紙の状態をキープして観たので、まだ未見で同じようにこれから観る(視る)んだという珍しい人は、それほどズバリとはいわずこれから観て(視て)もそう困らないはずだが軽くネタバレするので以下注意。
 戦中の広島(県)が舞台なので、もう最初からこの子(ヒロイン)死んでしまうのかな…という目で見てしまうが、死んだほうがマシなくらいの目にあって、こんなこと(それまでの出来事)を知るならバカのままでいたかったみたいなことを叫んで8・15に慟哭する彼女は、ちょっと山下清画伯ふうのイディオ・サヴァンで(素人だが)絵描きなのがたぶん作り手の思い入れの深さになっている。その作り手は(やはりというか)この目でリアル戦艦大和を見れたらな〜みたいなミリヲタでもあるようで、しかしそういう傾向(あと同じくやはりロリコンでもあるかな)をジブリの先達から継いでいるけれども、以前のジブリだとちょっとあるようなそういった悪癖に溺れないストイックな厳粛さがある。その拮抗があってこその、この達成だといえるのだ。
 つまり、この作品はジブリが準備した路線の最高峰なのである。さらに(大塚英志アトムの命題』を敷衍するなら)あの手塚治虫の天才ですら、これが出るために存在したのかとくらい思ってしまう。野間易通氏が「実写だったらよかったのに」とか言ってたが(アニメ嫌いの彼らしい意見。これが唯一の先入見)、この「世界」はアニメだから(リアルじゃなくても)リアルなのだった。下手に今の役者やCGで再現しようとしても、ほんとにリアルじゃなくなってしまう。*1なぜなら(これも大塚英志著を敷衍すれば)記号的な絵を淵源とするアニメが活字と実写の中間にあるゆえに、それでこそ可能な表現なのである。
 先行作品で『火垂るの墓』に比肩されるが、今でもそうなのか(知らない)毎年8月に繰り返しTVで放送されて戦争(戦中)をしのぶ映画の定番みたいなこれは、本質的には幼い兄妹の心中(しんじゅう)を描いているのであって(戦後を舞台に生き方が拙くて心中に追い込まれる若い男女の小説を原作者が書いている)、それよりもこの映画は正面から戦争と戦中の庶民生活を主題にしている。それゆえに、このほうが本質的な反戦映画なのだ。
 こういうものをみるとやはり、この戦争のトラウマは(柄谷行人氏の説くように)日本人の無意識に書き込まれているというほかない。憲法改正などと悪あがきするでない、あきらめろというべし。

*1:実際そうだったらしい。初稿ではこのアニメ版がTV放送されたと勘違いしてた。